糸井 |
音楽ってもっと俺らよりは、ある意味、
簡単なところがあるからね。 |
鈴木 |
きわめて簡単だよね。 |
糸井 |
つまり、リズムをこんくらいだよなって決めておいて、
ベース持って来てよって言えるようなものですよね。 |
鈴木 |
そこで複雑な要素を入れることもできるけど、
入れないこともできる。入れなきゃならないということも
ない。これもなかなかありえないことだよね、
「入れる必要もない」っていう。 |
糸井 |
全体がお互いにリズムボックス化するわけですか。 |
鈴木 |
その通り。基本がシンクロしてればいいってこと。 |
糸井 |
こないだホームページ見てたら、
俺が昔やった講演の記録が出てて、俺も忘れてたんだけど、
「何もかもがカラオケになってく」っていう。
あとはまだ、演劇のように、集まらなきゃできない、
こんな便利な世の中に、会わなきゃできないことがある、
っていうあたりを毛1本の柱にして、
俺はその2つの軸を持った楕円形の世界が見えている。 |
鈴木 |
時間軸からするとひょうたんなんです。
楕円とひょうたんがからみあってる。芝居とか。
規模がね、役者さんがたくさん出ることが多いよね。
舞台装置にお金がかかる。
舞台装置見てるだけで嬉しいもん。
それはもう1週間やる、とかそういうことによって
成り立っちゃうんだよね。 |
糸井 |
ただそれ、リハーサルから長い公演を考えると、
すごいですよね。すごい、1日ギャラ100万円の人が
稽古1ヶ月だもん。そこで重要なのは「やりたい」っていう
動機があるかどうかなんだよ。動機は何によって起こるか、
っていうのを考えなきゃならない。 |
鈴木 |
動機はたぶんさ、舞台に立つっていうさ。
一回性だったり、明日また違うっていう、
その辺の魔力なんじゃないの。
昔っから言われてるけどね。 |
糸井 |
じゃあその音楽を配信するっていうのは
魔力あるかっていうと、やったことないから見えない。 |
鈴木 |
わかんない。自分でもわかんない。
過程はおもしろいよ。
理系の人とメールのやりとりをすると、
俺は文系だから、文体も違う。
そんなこともいろいろわかってくるわけだよ。
ようするに狭いコロニーのようなところで
音楽をやってる人ばかりが集まったような……。 |
糸井 |
おんなじ種族じゃないわけだ。 |
鈴木 |
ものすごい論理的についてくる人もいる。
こんな細かいとこを、って。で、私も細かくなって。 |
糸井 |
それは違うんだよ、っていうのにけっこう説明いる。 |
鈴木 |
説明いる。違うというのをメールで言うのには
すごい時間がいる、というか長文になっちゃう。
これって文系だな。 |
糸井 |
そこに、システムそのものを疑うアイデアが浮かぶんだよ。 |
鈴木 |
どうして長文になっちゃうんだろうか、って。 |
糸井 |
だから、理系の人っていうのが外人だと思うんだよ。
俺にとって電脳部長の岩田さんがそうだった。
僕は僕でわからないなりに、
投げかければ答えを模索するんけれど、
今の言い方もまだわからないんだよ。
俺、ゲーム作ったことで、初めてこの領域を生きてるような
気がする。こんなこと考えっこないっていうところで
メール書いてる。こんなやつぁいねえよ、って。
でもいるんですよ。50万人が「せーの!」でやったときに
いる。今はインターネットで知るわけですよ、
やっぱり不愉快なことを言ってくる人もいれば、
何だよ、これみりゃあ書いてあるじゃねえかっていうことを
言ったりするやつもいれば。
でも、それが正体なんですね。
それを理科系のやつが近くにいると
いっぺんにそのサンプルがわかる。
向こうからすると俺がそういう人間なんだよ。 |
鈴木 |
そうだよ。なんつうの、となりに、ぶれた状態でいる。
おもしろく、かつ素晴らしいんだけど。 |
糸井 |
まずそこんところで理科系文科系のざっとしたとらえ方を
してるけど、その2つを考えたときって、
年齢を意識してないんですよ。飛ばしてるんですよ。
10歳だろうが60歳だろうが、理科系は理科系、
文科系は文科系、2番目の要素を飛ばしちゃうんですよ。
それもおもしろい。俺、年齢ってプライオリティが低いって
最近気づいた。 |
鈴木 |
それまでは、高かった。 |
糸井 |
高かったんだよ、俺。 |
鈴木 |
理系文系の分け方のほうがいいんじゃない? |
糸井 |
そっちのほうが先なんだよ。
あるいは、本読む人と読まない人とかね。
そうすっと、それように言わなきゃいけないってことで、どっちが上っていうんじゃなくて、
「読まない知性」ってすごくかっこいいじゃないですか。
それはそれで。高阪剛くんなんかと喋ってると
こいつ利口だなあって思ったりもするんですよ。
だけど、いやあ、自分は何も書かないですから、って
言うんだよ。何言ってるんだよ、そんなもん、要するに
文字に書けないことを考えてるわけだから、
俺は尊敬するわけだよ。今までのやりかただと、
文字に書けないものを残した人は、
無文字文化とおなじ扱いされるんだよ(笑)。
糞な文字を残した人のほうが上だったんだよ。
俺はそれをぶっ殺したくてしかたがない。
書けないけれどやれてるっていうのを認めるっていうのは、
これは運動系か何かで互いに尊敬しあえる。
昔は年収も判断の基準に入ってた。
あの人、お金持ちだからすごい、とか。 |
鈴木 |
昨日何時間しか寝てないからすごいってことも
あるかもしれないよ。 |
糸井 |
今はその裏の裏をかいてそうなっちゃってるんだよ。 |
鈴木 |
なんでそんなに睡眠時間減っちゃったの、って。 |
糸井 |
慶一君がそういうこと言ってる。
あんたコアラみたいな人だったもんね、もともと。
寝てばっかりいて……。 |
鈴木 |
どんどんね、家にいると、コンピューターがあるから
そこにいてしまうんだよ。 |
糸井 |
だれかがいるから「あいよあいよ」って
いっちゃうわけでしょう? |
鈴木 |
そう、すぐ返事出そうとする。
だから、俺のメールの時間なんて無茶苦茶になってきてる。
大瀧さんじゃないけど。 |
糸井 |
大滝さんたぶんメールを音で知らせるしくみがある。 |
鈴木 |
見てみたいなあ。 |
糸井 |
あの意地のはりかた! |
鈴木 |
いや、あの人、非常にそこが中核にあるから、
おもしろいですよ。 |
糸井 |
あれを薄めたかたちがいろんな人だよな。 |
鈴木 |
いろんな人。そのなかで、一番濃密、大瀧さんは。 |
糸井 |
現役。じゃあ先行きっていうのは、何か向こうっ側が
火事じゃないけど、明るいイメージがあるっていう。
俺と同じだね。いろいろ困ったことも起こるですよ。 |
鈴木 |
だから、何が起こるかわからないから明るいんですよ。 |
糸井 |
他の国の人たちってそれ先にやってたと思うんですよ。
日本人以外って。たとえばマレーシアの学生だったら
英語喋れないだけで給料4分の1になるですよ。
そしたら、ほんとにやんなきゃな、と思うでしょ。
フィリピンパブの女の子にしてもさ、
「シャチョサン」て言ってるそうじゃないですか。
あれ、外国語だからね。 |
鈴木 |
英語なんていうのはアジア圏のなかでは
日本が一番遅れちゃうわけだよ。 |
糸井 |
らしいんだよねえ。
昨日俺、英語どうしたらいい、って
キムラくんに訊いたらさ、
「やっぱり僕も得意じゃなかった」って言うわけ。
でもあいつ勉強ができるうえでのそういう言い方だから、
違うんだけど、留学でオーストラリアに行ったら、
急にわかっちゃったんだって。うーん……。 |
鈴木 |
逆に日本人で英語うまいとエライってみえちゃう。
日本人同士ではね。それもくだらないけど。
なんて、今また英語習ってんだけどさ。
(おわり) |